史実とフィクションのあいだ②
「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり (The Aeronauts)」観ました。
1862年、日本が幕末期だったころのイギリスで、気象を研究するために気球に乗って空を飛ぶ実話を題材にした話。主演はフェリシティ・ジョーンズです。「ローグ・ワン」「インフェルノ」「ビリーブ/未来への大逆転」など最近活躍が目立つ役者さんです。
1/17(金)から映画館でも上映していますがAmazonプライム発の映画です。映画は映画館で上映されるから映画なので「ネット配信の映画」は映画って言っていいのかな?という違和感はあるものの、出かけずに映画が観られる利便性にいずれ淘汰される平成の価値観でしょうか。
ただ今回はネット配信映画の利便性が裏目に出たかな。。。作中で気球に乗るのは一度だけ。物語の冒頭で気球に乗り、フライト中に回想シーンを織り交ぜて物語が進みます。フェリシティが演じるアメリアも史実には登場しない架空の人物です。展開にひねりが少なく予算の不足を感じてしまいました。
それに、主演の二人はとてもいい演技をしていてそれだけでも見どころになるけど、理工系の研究は再現性が重視されますから、たった一度のフライトで気象研究の業界に影響を与える発見が得られるというのも不自然な気がするのです。
まだAmazonには自前で映画を作るノウハウが不足していたのかもしれません。Amazonプライムの映画の今後に期待。
【公式】『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』2020年1月17日(金)公開/本予告
史実とフィクションのあいだ
「ビリーブ 未来への大逆転 (On the Basis of Sex)」観ました。
1970年代のアメリカが舞台で、のちにアメリカの最高裁判所の判事になる、実在の女性弁護士ルース・ベイダー・ギンズバーグさんの活躍を描く映画です。「ローグ・ワン」で主演だったフェリシティ・ジョーンズが主演。作中でフェリシティ・ジョーンズの次のカットでフェリシティ・ジョーンズと同じ衣装の表情が厳しいおばちゃんが出てくると思ったらキンズバーグさん本人でした。
法学部と法科大学院で優秀な成績をおさめて弁護士資格を得るものの、女性だからという理由で大手の弁護士事務所に就職できず、しかたなく法学部の教授になる。。。そうなのですが、1970年代のアメリカはこんなに差別があったのでしょうか? アメリカといえば合理主義・実力主義のイメージが強く、しかたなく大学の先生になれるほど優秀な人を性別で弾くという点が気になります。
とはいえ、細かいところが気になるのは映画がよくできている証拠。作中でキンズバーグさんがある法律が女性だけでなく男性も差別している点に気付きます。一つの裁判でクライアントの弁護を担当するだけでなく、法律上の性差別撤廃までを同時に訴える鋭さ。自分の経験と照らし合わせて世の中が抱える矛盾に気付き、知力を糧に行動起こす流れがきれいに描けていたいい映画でした。
【公式】『ビリーブ 未来への大逆転』3.22(金)公開/特報
神がそれを望んでおられる
「2人のローマ教皇 (英語原題:The Two Popes)」観ました。
Netflix映画です。Netflix映画は製作と制作が一つの会社の中で行われているせいか、企画の作りこみが甘い作品がときどきあるのですが、この作品は面白かったです。映画館で上映しても鑑賞に堪えられる作品だと思います。
2012年に ローマ教皇がベネディクト16世からフランシスコに交代する舞台裏での出来事を映画化した作品。史実ではベネディクト16世とフランシスコさんの対話は、フランシスコさんが教皇になった2013年以前には行われていないそうですが、さすがにお互い知り合いだっただろうし、映画の中でほど本格的に対話をしていなくても何かの打合せで顔を合わせて世話話をしたことくらいはあったでしょう。
この映画の特徴ですが、物語の大半がベネディクト16世とフランシスコさんの対話のシーンです。キリスト教の要職を辞めたいフランシスコさんvsフランシスコさんに辞めてほしくないベネディクト16世の対話が軸なのですが、お互いへの尊敬の念は維持しつつ、キリスト教の故事を織り交ぜて理路整然と自分の意見を組み立てる話し合いがとても知的で飽きさせません。失礼を承知で言うと、お年寄り二人で話し合っているだけの映画なのですが、それでも飽きさせないのは名優の技量によるものでしょうか。
アベンジャーズ・その後
アベンジャーズのスカーレットウィッチと日本語が下手なホークアイが主演の「ウインド・リバー」と、マイティソーとバルキリーが主演の「メン・イン・ブラック:インターナショナル」観ました。
ウインド・リバーはアメリカ原住民が多く暮らすオハイオ州で起きた傷害致死事件の話。アメリカの地方なので警察の目が満足に届いておらず、寒くて雪深いから娯楽も少なく、なぜそんなところに住んでいるのかと言えば入植者にそこに住むことを強制されたから、らしい。
さすがに実際のアメリカの地方がこうだとは思わないけど、まさかの社会派映画でした。アベンジャーズでもどちらかと言えばシリアス担当だったホークアイとスカーレットウィッチの雰囲気によく合っています。
MIBの方は明るくて楽しい娯楽作品。疲れて細かいことを考えたくないときに観てスカッとできる映画でした。ウインドリバーとMIB、きれいにターゲット層を分けた物語でなりました。
出番はあんまりないけどとりあえず有名な役者を広告塔に起用して、作品の質はともかく集客(興行収入)だけはしっかり狙うっていう映画の作り方があることに最近気づいてしまったのですが、この2作は違いました。
映画『メン・イン・ブラック:インターナショナル』予告 6月14日(金)公開
伝説が壮絶に終わる
「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け (Star Wars The Rise of Skywalker)」観てきました。
いまだから言えるけどエピソード8があんまり面白くなかったので今作も不安だったのですが、今作ではエピソード7と8で広げた伏線を回収しきれいに3部作を締めくくれてました。監督はエピソード7でも監督だったJ.J.エイブラムズ。「スタートレック」シリーズにも監督作品があり、シリーズもので困ったらとりあえず呼ばれていい仕事をする人です。
今作ではレイの出自が明らかになり、7-8-9作の3部作だけでなく、1971年から続いたエピソード4から続いた物語に一応の区切りをつけることができています。宇宙中を巻き込む物語をきちんと描けてそれを終わらせられる構成力はすごい。
アベンジャーズに挑戦しようとして製作ペースを上げた無理がたたって失速した時期もあったけど、架空の物語をひとつの神話と呼べる領域まで持ち上げることができていると思います。2019年の締めくくりにふさわしい壮大な映画でした。
一方、地上では。映画のチケット料金は普通は1800円のはずですが、僕が観た映画館では1900円にこすっからい値上げをされておりました。観客ははるか彼方の銀河系の物語を観に来たのに、映画館の方は手の届く範囲の観客の足元を見ていたようでした(笑)
「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」最後の予告篇 世界同時解禁
トランスポーター?
「運び屋(原題: the mule)」観ました。
80代のお年寄りに車を運転させて決まった場所に麻薬を運ばせるだけの映画なのですが、面白かったです。(高齢ドライバーが主役の映画なので声高にはおすすめできないのですが。。。)
主人公の老ドライバーは説教臭いことや小狡いことは言わないのですが、当初は斜に構えたように応対していた麻薬の売人もいつの間にか主人公に親しく敬意を持って接するようになります。相手が警察官でも銃を持った売人でも麻薬王でも、時折冗談をはさみながら常に堂々と話せる包容力がすごいです。きちんと人生経験を積んだ人は言えることが違うのでしょうか。
自分の意見は押し付けない、相手のことも理解しようと歩み寄る、反省すべきところは反省し人との関わりを保ち続ける。老齢に差し掛かってもこういうことができる人になりたいと思いました。本作の原題the muleは「頑固者」の意。テーマは麻薬を運ぶことではなくて、あくまで主人公の人柄です。
さて、麻薬の運び屋は一回運ぶだけで数百万円~数千万円の報酬になる描写がありました。麻薬王はバーテンダーや使用人が常駐する豪邸住まい。麻薬の成分から危険な部分を取り除き、違法性をなくせば相当いいビジネスになると思うのですが。。。そんなことできたらもう誰かがやってるか(笑)
インドとパキスタンの車窓から
「バジュランギおじさんと小さな迷子(原題: Bajrangi Bhaijaan)」観ました。
インドで迷子になったパキスタン人の女の子を見ず知らずのおっさんが親御さんのもとに届ける、という映画です。女の子がインドで迷子になって途方に暮れているところで街のお祭りに遭遇し、そのお祭りの踊りでやけに存在感を発揮してるおっさんがいると思ったらこの人が主人公でした。主人公の明るさとか真っすぐさがすがすがしい、いい映画でした。
この映画でひとつ勉強になったのが、インドとパキスタンの仲の悪さ(^^;; ビザ持たずに入国したらスパイ容疑で即逮捕でしかも拷問にかけられるって相当の仲の悪さです。パキスタンとインドが分離するときに起きた戦争がきっかけだそうですが、その戦争が1947年だから戦争時代をリアルタイムで経験している人も多いでしょう。パキスタンとインドの対立は現在進行形なのでしょうか。
それからもう一点。インドは一つの州だけで人口が一億人くらいいて州ごとに言語も違います。だからインドは州が違ったらほぼ別の国だと、インドの人から聞いていたのですが、この映画のインドは意外と一つの(コンパクトな)国にまとまっていました。
いや映画の着眼点が違うか(笑) 明るくて前向きで楽しいいい映画でした。