華麗なる冷酷

「ジョーカー」観てきました。

今回のジョーカーはバットマンの宿敵として華々しく活躍するダークヒーローじゃない。「元から精神に病を抱えた貧困層の中年が、周囲の状況に拍車をかけられ精神のバランスをさらに崩していく過程を描いた映画」です。字面にするとかなり暗いのですが、監督のトッド・フィリップスの演出と、ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技がすごい。誰でも持っていそうな心の闇の部分をうまく表現できており、暗い話なのに飽きさせません。DVDになったらもう一度観たいです。

でも、いい映画だから細かいところが気になる。こういうサイコパス系の映画は、出発点はおかしいが論理的な展開は正しいという矛盾が興味を引くものです。自分が実子ではなく養子だとわかったところで母親を手にかけてしまった理由にはいまいち論理性がありません。字幕だったから英語の内容を正しく日本語に写せなかったのでしょうか。

驚いたのですが監督のトッド・フィリップスは実は「ハング・オーバー」3部作など、コメディ映画で有名な監督でした。ハングオーバーとジョーカー。コメディ監督の思考にどのような変数をかけるとこのような映画のアイデアが出てくるのか、大変興味深いです。主人公のアーサー・フレックは、コメディ映画に向き合い続けるトッド・フィリップス監督自身ではないのか。人を笑わせるのアイデアを作るときに滓のようにたまった狂気が析出してできたのが今回の映画なのかもしれません。