ランボー待ち②

ランボー5の日本公開待ちというわけで「ランボー/最後の戦場 (原題:Rambo)」観ました。

ランボーはもともとベトナム戦争の帰還兵の話です。1作目('82年)ではただ立ち寄っただけのアメリカの片田舎で帰還兵のランボーが差別に遭う物語で、アクションというよりヒューマン映画に近い構成でした。

アクション映画になるのは2作目以降です。ベトナムに取り残されたアメリカ軍の捕虜を救出する2作目「ランボー/怒りの脱出('85年)」、ソ連軍に捕まった恩師を救出する3作目「ランボー/怒りのアフガン('88年)」と続きます。もともと疲れたベトナム帰還兵の話だから3作目以降は本筋からそれてる気がしないでもありません。

さて、この4作目「ランボー/最後の戦場」ですが公開は2008年で、ミャンマーの悪徳軍人を相手にランボーが戦います。ランボーが本当は戦車とか戦闘機向けの、人に向けて撃ってはいけないタイプの機関砲でつぎつぎと敵を打ち倒していく映像はスカッとします。ランボーが打ちまくってるところにわざわざ出てくる軍用の船とかトラックとか、もはやただの的でしかないw

映像としては面白いのですが、物語として今一歩踏み込みがほしい映画でした。21世紀に入ってランボーのような軍人が活躍できる、敵側に徹頭徹尾の極悪人しかいない「戦場」というのはどうにも想像しづらく、またベトナム戦争が終わってもう30年経つわけだからランボーにはそろそろ立ち直っていてほしいと思います。

恐らく今度こそランボーの最終回となるランボー5で、ランボーはどこを戦場に選ぶのか、日本公開を楽しみにしています。

 

ランボー 最後の戦場 (字幕版)
 

ランボー待ち

ランボー5のプロモーションを兼ねているのか、最近立て続けにスターローンの映画が出ました。ちょうどツタヤに行ったときに並んでいた「バックトレース」と「大脱出2」を観ました。

「バックトレース」はお店のポップによってはスタローンしか写っておらず、てっきりスタローン主演作品かと思ったのですがスタローンは脇役。つなぎのシーンにしか出てこないスタローンの存在感があり過ぎて主人公の役者が目立ちません。記憶喪失の主人公が自分の記憶をたどって驚きの結末を迎える話らしいのですが、最後まで観られませんでした(m__m) 

「大脱出2」の方もあまりスタローンが活躍しません。「大脱出1」ではスタローンとシュワルツェネッガーがW主演の活躍で、コンビを組んで脱獄する見せ場があったのですが。今回は部下役の若手俳優が活躍して、こちらの方が主演のような扱いです。

どちらの映画でもスタローンの出番が少ないのですがランボー5の準備で忙しかったのでしょうか?

スタローンは現在73歳(!)ですが、脚本も書けるし映画の監督もできる多彩っぷりにほかの同世代の役者よりも優秀さが際立っている気がします。ランボー5作目の「ランボー5/ラスト・ブラッド」 、外国ではもう封切られているようなのですが日本ではいつ封切られるのかな。

 

「大脱出」1作目は面白いです

大脱出 (字幕版)

大脱出 (字幕版)

 

控えめなキアヌ無双

ジョン・ウィック:パラベラム (John Wick: Chapter 3 - Parabellum )」観てきました。

面白かったけど、1作目と2作目で盛大にルールをぶっちぎって襲い掛かってきた敵を全員返り討ちにしてた爽快なジョンウィックが、今作では微妙に空気を読みながら暴れている点がちょっと残念です。4作目への伏線を作ることに集中したのかな。

小道具にロザリオが出てきたり、ホテルの支配人が神父を思わせる服装をしていたり、ジョン・ウィックのシリーズはキリスト教を意識する描写が多いのですが、今作で登場した裏社会のボスはターバンを巻くイスラム教のような服装の人でした。「ジョン・ウィックはキリスト世界だけじゃなくてイスラム世界も敵にまわしちゃったんだよ。ほんとに世界中敵だらけだよ」というメッセージとも取れるのですが、それにしても今回は説明描写が多くていまいちスカッとしません。

あとやっぱり日本描写が適当なんだなあ。ニンジャ(とされる殺し屋)はテコンドーで戦ってたし、ニンジャ軍団のリーダーの日本語は日本語の字幕がないと意味が取れない。アクション映画としては十分面白くて観て損はない映画だけど、1作目と2作目で製作サイドが作ったハードルを超えられなかった印象です。4作目が出たら観るとは思うけど、DVDになるまで待つと思います。

 


ジョン・ウィックが最強の刺客・ニンジャとバトル/映画『ジョン・ウィック:パラベラム』日本版予告編

華麗なる冷酷

「ジョーカー」観てきました。

今回のジョーカーはバットマンの宿敵として華々しく活躍するダークヒーローじゃない。「元から精神に病を抱えた貧困層の中年が、周囲の状況に拍車をかけられ精神のバランスをさらに崩していく過程を描いた映画」です。字面にするとかなり暗いのですが、監督のトッド・フィリップスの演出と、ジョーカー役のホアキン・フェニックスの演技がすごい。誰でも持っていそうな心の闇の部分をうまく表現できており、暗い話なのに飽きさせません。DVDになったらもう一度観たいです。

でも、いい映画だから細かいところが気になる。こういうサイコパス系の映画は、出発点はおかしいが論理的な展開は正しいという矛盾が興味を引くものです。自分が実子ではなく養子だとわかったところで母親を手にかけてしまった理由にはいまいち論理性がありません。字幕だったから英語の内容を正しく日本語に写せなかったのでしょうか。

驚いたのですが監督のトッド・フィリップスは実は「ハング・オーバー」3部作など、コメディ映画で有名な監督でした。ハングオーバーとジョーカー。コメディ監督の思考にどのような変数をかけるとこのような映画のアイデアが出てくるのか、大変興味深いです。主人公のアーサー・フレックは、コメディ映画に向き合い続けるトッド・フィリップス監督自身ではないのか。人を笑わせるのアイデアを作るときに滓のようにたまった狂気が析出してできたのが今回の映画なのかもしれません。

 

音楽家の伝記映画

「レディ・マエストロ (原題:The conductor)」観てきました。

ほぼ世界初だった実在の女性指揮者アントニア・ブリコの半生を描く映画なのですが、いい映画でした。男女差別や権威主義をはねのけて指揮者として成功していく映像はとてもポジティブで、断られてもめげずに売り込むアントニアの前向きさが良かったです。映画は舞台が1920年代のヨーロッパとアメリカで、景色だけとっても見どころがあります。レトロな街並みとクラシックの音楽は相性が抜群です。

いい映画だったので細かいところが気になるのですが、この映画はどこまでが史実なのでしょうね? 伝記映画なのか、アントニアの半生を題材としたフィクション映画なのか。無条件で支援してくれる自分に好意を寄せてくれる大富豪の御曹司なんてそう都合よく現れないはずだし、男かと思ったら中盤で性別が実は女性だった登場人物がいるのですが、男か女かくらい見ればわかると思うのですが。

映画の舞台は1925年~1933年のアントニアが23歳~31歳までです。史実のアントニアは1989年まで存命(87歳没)で、晩年は病気がちだったそうですが、それにしても指揮者として本格的に活動するのはこの映画のあとの話ではないでしょうか?

 


9/20公開『レディ・マエストロ』予告編

ベトナム映画について

ベトナム映画の「ハイ・フォン: ママは元ギャング」観ました。中々面白かったです。

原題は主人公の名前の「Hai Phượng」です。「ママは元ギャング」なんて邦題のせいで観る人が減りそうですね。映画観たらわかるけどそもそもギャングじゃないし英題の「Furie」の方がまだまし。あと、ベトナムの人とこの話をしたら「あーハイフンね」と言われました。ハイ・フォンですらない笑

元格闘家の母親が誘拐された娘を取り返しに行くというひねりのないお話なのですが、主人公の役者のゴー・タイン・バンの格闘アクションがかなりの見どころです。冒頭のシーンに出てくるベトナムの農村部をもっと観てみたかったな。物語の大半は都会のサイゴンなのですが、やっぱり田舎の方がその国らしさが出ると思うんです。

日本で観られるベトナム映画はとても限られています。去年は新宿や横浜でベトナム映画祭が開催されて、そこで何本かベトナム映画を観ることができましたが今年は開催されないもよう。この映画の人気が呼び水になって、もっと日本にもベトナム映画が流れてくれたらいいなって思えました。

余談ですが、このゴー・タイン・バンさんはその数少ない日本で観られるベトナム映画にけっこう出ています。「クラッシュ('09)」「ソード・ウォリアーズ 皇帝の剣闘士('16)」「フェアリー・オブ・キングダム('17)」「仕立て屋 サイゴンを生きる('17)」「スターウォーズ 最後のジェダイ('17)」などなど。スターウォーズは今冬封切りのエピソード9次第で評価が変わるとしても、今まで観た出演作の中ではこの「ハイ・フォン」が一番面白かったです。

 


FURIE (2019) Official Trailer | Watch Now!

未来のはなし

「移動都市/モータルエンジン(原題:Mortal Engines)」を観ました。

戦争で荒廃した世界で、人々が陸上戦艦のうえに都市をつくり、移動しながら生活するお話。主人公の住む移動都市がそれよりも大きな移動都市「ロンドン」に襲われるところから映画が始まります。珍しいニュージーランド映画でした。ニュージーランドの映画でロンドンに襲われるというのは風刺の効いた演出です。

面白かったのですが惜しい映画でした。移動都市というアイデアにはインパクトがあり恋愛要素もあり磨けば光りそうな要素がけっこう入ってのですがいまいち磨きが弱いです。4部作の小説が原作で、これはその第1作目を題材にした映画だそうなのですが。製作費よりも興行収入が少なかったそうだから続編は出ないかもな、、、ひとまず原作は読んでみたいです。

映画で未来の世界を描く場合、暗い話になっていることが多いです。下りのエスカレーターと同じで物事は放っておけば悪い方向に進むことが多く、未知の困難を乗り越えてエスカレーターを駆け上がるよりも、既知のネガティブ状況がネガティブな方向に進展する方が想像しやすいということでしょうか?


『移動都市/モータル・エンジン』日本版本予告映像