5月の金曜日に観たい映画について

「スノー・ロワイヤル (Cold Pursuit)」

家族を失った除雪作業員が麻薬組織に復讐するお話。一見クールだけどキレたら暴れまくる役柄はリアム・ニーソンの持ち芸ですね。原住民と白人の距離感や貧富の差、蔓延する薬物など、ブラックユーモアな演出に織り交ぜてアメリカ社会が抱える歪が紹介されます。アクション映画の添え物としては深い問題提起があります。

スノー・ロワイヤル(字幕版)

スノー・ロワイヤル(字幕版)

  • 発売日: 2019/10/11
  • メディア: Prime Video
 

 

マイル22 (Mile 22)」

行方不明になった放射性物質を巡って、インドカーという架空の国の警察がCIAに襲い掛かるお話。警察なのに街中で自国民の犠牲もいとわず重火器を乱射していいのかなという疑問はさておき、94分という短めの尺でテンポよく物語が進みます。マーク・ウォールバーグの神経質な捜査官の演技が作品の緊張感を高めます。

マイル22(字幕版)

マイル22(字幕版)

  • 発売日: 2019/07/12
  • メディア: Prime Video
 

 

「タイラー・レイク -命の奪還- (Extraction)」

誘拐された麻薬王の子どもを救出するお話。一番の見どころはアクションシーンとカメラワークです。主人公の車を追いかけていたカメラがいつの間にか車の中を映していたり、格闘中に落下した人物と一緒にカメラも落下してカットをまたぐことなく一連のシーンに仕上げています。一体どうやってカメラを動かしていたのか気になる。


クリップ映像『タイラー・レイク ー命の奪還ー』 - Netflix

三匹が殴る蹴る

「トリプル・スレッド (Triple Threat)」

タイトルの通り、3人のアクション俳優が主演の格闘アクション映画です。一応、テロリストに故郷を襲われた主人公が復讐に立ち上がる、という大まかな物語はあるものの、こちらはあくまで添え物。冒頭の東南アジアの村が襲われるシーンはどことなく80年代のアメリカ映画へのオマージュを感じます。

予算がないのかヒロインが銃撃戦から命からがら逃げ出すシーンで、街中をふつうに行き交う人や車が写りこんでしまっています。生身の人に向けてショットガンを発砲するシーンもありますが、撃たれて木っ端みじんになった人がどう見ても作り物。一時停止してしっかり目を凝らして見ても作り物。テログループと言っても大掛かりな軍隊ではなく、主人公3人の敵はあくまで全部で5人しかいないテロリストです。もう現地の警察に任せとけって感じですね。

それでもこの映画が面白いと言えるのは、CGや特殊な撮影技術の手を借りない実物の格闘アクション映画だからでしょうか。トニー・ジャームエタイ、イコ・ウワイスはシラット、タイガー・チェンは中国武術と、主演の役者3人がそれぞれ映画のために格闘を学んだのではなく、役者もできる格闘家だからか、動きのキレが役者のレベルではありません。恐らく物語など二の次の、鍛え抜かれた格闘技を観客に見せるための映画なのでしょう。細かいことを考えずにビール缶でも片手に観られてスカッとできる映画でした。 

 


『トリプル・スレット』予告

トリプル・スレット(字幕版)

トリプル・スレット(字幕版)

  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: Prime Video
 

 

インドの本格時代劇

「パドマーワト 女神の誕生 (Padmaavat)」

面白かったです。少々尺が長いとも思うのですが、無数の騎馬武者の軍勢が激突する合戦シーン、ところどころ挟まれるミュージカルのシーンや、インドの豪華な宮殿の映像は見ごたえ抜群。今まで観たインド映画の中ではもっとも迫力のある作品でした。

というか衝撃的な映画でした。主人公で王妃パドマーワティやその夫の国王は義に厚く正しい行いを重んずる人格者で、対する宿敵の隣国の王がかなりの悪人ですが、勧善懲悪の物語になりません。この映画はインドに伝わる叙事詩を映画化した作品で、つまり史実とは異なる時代劇の映画であり、わかりやすい物語に直されているのだと思いますが、古代インドの人びとの精神性の一端に触れたかのような物語でした。

製作費が30億円とのことですが、インドの物価は先進国と比べると1/3~1/5ですから、感覚的には100億円近い予算が組まれた映画ということになります。衣装やキャストも豪華で、インドの宮殿がしっかり再現されているとても豪華な画面でした。この映画はオールインド予算、インド語で、リアリティもばっちりです。欲を言えば、今度はハッピーエンドのインドの歴史映画が観たいのですが。。。

  


映画『パドマーワト 女神の誕生』予告編

パドマーワト 女神の誕生 [DVD]

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  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: DVD
Padmavat: An Epic Love Story (English Edition)

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金曜日の夜に観たい映画について

「アップグレード(Upgrade)」

 事故で全身麻痺の重傷を負った主人公をAIチップを組み込むハイテク手術で蘇生。事故を負わせた犯人に復讐する話です。主人公を親身に補佐するAIですが実は。。。 物語のテンポもよく、与えられた予算の中できれいにまとまった映画です。もう少し予算があったらきっとラストシーンのその後も描かれていたのでは。面白かったです。

アップグレード [DVD]

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  • 発売日: 2020/04/02
  • メディア: DVD
 

 

「フレンチ・ラン(Bastille Day)」

スリとCIAの捜査官がコンビを組んでパリで起きたテロ事件を捜査します。政治的な主張と思われたテロの真の目的や犯人の正体など、観る人を飽きさせない作りです。タイトルのBastille dayはフランスではフランス革命が起きたバスティーユ牢獄襲撃の記念日だそう。あまり映画の内容とは関わりが薄く、邦題の方がしっくり来ますが。

フレンチ・ラン(字幕版)

フレンチ・ラン(字幕版)

  • 発売日: 2017/06/01
  • メディア: Prime Video
 

 

「サスペクト 薄氷の狂気 (Night Hunter)」

マン・オブ・スティールのヘンリー・カヴィルが寡黙な警察官の主人公。冬のアメリカで起きた猟奇殺人事件を捜査します。主人公がザ・真面目な警察官という感じでヘンリー・カヴィルらしさがあまりないのと、犯人の正体がちょっとご都合主義な気もするけど、役者陣が豪華なので楽しめます。 

サスペクト-薄氷の狂気(字幕版)

サスペクト-薄氷の狂気(字幕版)

  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: Prime Video
 

 

それはすでに我々のなかにいる

遊星からの物体X ファーストコンタクト (The Thing)」観ました。

南極で発見された宇宙生物「物体」を調査中、いつの間にか覚醒した物体につぎつぎと、本人たちも気付かないまま乗っ取られ、まだ乗っ取られていない人に次々と襲い掛かる。。。というお話。「the thing」ってシンプルな原題に「遊星からの物体X 」なんて、映画に登場する物体のどことなく不気味な雰囲気をよく表現できてる名邦題ですね。

誰が「物体」に取り付かれてるかわからない、密閉空間で次々と人を襲う、という物語だけ聞くと現在流行しているコロナウィルスにそっくりだなと思ったのですが、2011年の映画ということもあり、物体に乗っ取られた人のCGもなんとなく偽物っぽくてそんなに怖くない。主人公の女性科学者が物体に立ち向かうシーンは恐怖よりも爽快ささえありました。(怖くないように真っ昼間に電気つけて観ましたが 笑)

コロナウィルスの拡大が収まっているように見えず、上映予定だった映画は次々と延期です。僕の仕事も在宅勤務になりました。僕は外出自粛の要請が出ても出なくても普段からほとんど外出しないのであまり日常に影響はありません。一人暮らしだから家族の誰かにコロナウィルスをうつすこともないしうつされることもない。

新しい映画が上映しない今のうちに、気になっている映画のDVDを観たり、買ってそのままになっている小説を読んで、世の中の流れに追いつきたいと思っています。

 


映画『遊星からの物体X ファーストコンタクト』予告編

遊星からの物体X ファーストコンタクト(字幕版)

遊星からの物体X ファーストコンタクト(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/28
  • メディア: Prime Video
 

 

詩人と同じようにスペンサーだ

「スペンサー・コンフィデンシャル (Spenser Confidential)」観ました。

ロバート・B・パーカーの小説シリーズに着想を得た物語です。原作の小説シリーズは全部で39作もあり、僕はまだ数冊しか読んでないのですが、少しずつ楽しみに読んでいます。

ちなみにスペンサーは下の名前が不詳です。この映画でもスペンサーの刑務所の書類に釈放スタンプを押すシーンがあり、本名も記載されているようなのですが、「SPENSER」とは書かれているもののその前のファーストネームの箇所だけぼかされていて判読できません。

映画と小説のつながりはこうしたシリーズのお約束と一部の登場人物にとどまり、原作の登場人物はスペンサーと相棒のホーク、それに愛犬のパールしか出てきません。せめてスペンサーの彼女のスーザンは出してほしかったところ。スペンサー小説は会話劇がひとつの見せ場なのですが、今回の映画ではそれも特に意識されていないようでした。

映画自体は重いテーマもなく、アメリカの地方都市で起きた小さな事件をスペンサーが自分の信念に基づき解決に乗り出す、気楽に観られるお話です。製作費もしっかりかけられているようで、気楽な物語だけど画面はしっかり作りこまれています。続編を匂わす終わり方をしていました。続編が出たら観てしまうでしょう。

 


マーク・ウォールバーグ主演!『スペンサー・コンフィデンシャル』予告編 - Netflix

 

走り続ける力

「さらば愛しきアウトロー (The Old Man & the Gun)」観ました。

御年83歳の主演ロバート・レッドフォードの俳優引退作。人生の中で100回近い銀行強盗を成功させ、何度刑務所に送られてもその都度脱獄した、実在の人をテーマとした映画です。

わざわざ捕まってはまるでそれを楽しむかのように脱獄する主人公。銀行強盗もお金目当てではなく、あくまで何物にも囚われない自由を謳歌するための行動のように見えます。世の中の人はさまざまな制約の中で生活しています。世の中の常識、責任、周りの人々との関係性などなど、社会生活を営む上で必要な制約がたくさんあり、これらの制約を守ることで平穏な毎日を送ることができる。

けれど、誰もがそうした毎日を窮屈に感じ、それを打ち破りたいと心の中で思っているかもしれません。そうした願いをすがすがしく描く自由で軽快ないい映画でした。役者として自在に生きてきたロバート・レッドフォードの最終回にふさわしい映画でした。

 


ロバート・レッドフォード俳優引退作/映画『さらば愛しきアウトロー』予告編

さらば愛しきアウトロー (字幕版)

さらば愛しきアウトロー (字幕版)

  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: Prime Video