分断の切り口について

「リチャード・ジュエル(Richard Jewell)」

爆発物を発見して一躍注目を浴びるも、犯人ではないかと疑いをかけられメディアと警察に追及される警備員の話。実際にあった1996年のアトランタテロ事件をもとにした映画で、御年90歳クリント・イーストウッド監督作品です。

観客の興味の引くようエンターテインメント性も盛り込み社会派映画だけど難しくなり過ぎない構成になっています。90歳で自分の作家性だけにこだわらずに観客の目も気にすることができるバランス感覚はすごいですね。

無実の罪で犯人扱いをされてしまった主人公のリチャード・ジュエルですが、軽度の障がいがあるかのような描写があります。この映画は警察とメディアの誤認でプライバシーを侵害されてしまった市民を描くだけでなく、アメリカ社会にある差別の存在を提示している映画にも見えました。

人種・宗教・所得・教育などなど、違いがあることが前提のアメリカ社会です。リチャード・ジュエルの事件が起きたのは26年前。違いがある人を差別しない寛容さも、その頃より醸成されたはずですが、昨今のように揺れている世の中では、ふとした拍子に差別が吹き出してしまうのでしょうか。

 


Richard Jewell